拝啓プロゴルファーを目指す皆さんへ

(C)KIGOLF 猛暑の続くこの夏軽井沢でふと感じた涼風が、五感すべてに心地よく響いた

 

私はこれまで、コーチとして多くの選手やジュニアゴルファーたちと向き合ってきました。


彼らと過ごした日々の中で、常に感じてきたのは、

選手一人ひとりが、まるで私自身の“作品”のように

大切な存在である、ということです。

もちろん、どんな結果も最終的には本人の努力の賜物です。

しかし、彼らの成長や苦悩に寄り添い、時に朝から晩まで解決策を考え抜く

そのような時間を共に過ごしてきたからこそ、
私は彼らを“心血を注いだ宝物”のように感じ、大切にしてきました。
(選手にとっては「うざい」かもしれませんが汗)


選手が勝てば、私は静かにその成果を喜び、選手が悩めば、
どうにか助けになりたいと心を砕きます。

だからこそ、一人ひとりが“自分の大切な作品”だと心から思えるのです。


しかし、時には別れの時が訪れます。

選手自身、あるいは周囲の判断によって、
コーチの存在が「不要」または「邪魔」と見なされる瞬間です。

試合での成績が上がり、メディアへの露出が増える中で、
支えてくれた人々の存在を忘れ、

時に、自分の力だけで登ってきたかのような
感覚に陥ることがあるのも否定しませんし、

中には、言葉や態度がプロとしてふさわしくない形で
表に出てしまう選手もいます。

私自身、まだまだ未熟で、決して聖人君子ではありません。


なので、その人のこれからの幸せを心の中で静かに願いながら、
私は静かに去ることにしています。


この文章は、これからプロを目指す10代・20代の若い選手たち、
そしてその保護者の方々に向けて、

私自身の経験を通して
今、感じていることを伝えるものです。

プロスポーツ、特にプロゴルフという世界がどのように成り立ち、
どんな姿勢が求められるのか?

今一度、原点に立ち返って考えるきっかけになればと願っています。

まず、あなたに知っておいてほしい大前提があります。

それは、プロゴルファーに届くお金の出発点は、最終的にはファンや視聴者、
消費者の存在にあるということです。

試合を観に来てくれるファン、放送を契約して視聴してくれる人々、
ゴルフ用品を購入するアマチュアゴルファー

こうした方々の行動が、企業やメディアにお金を動かし、
そのお金が広告費や協賛金、放映権料となってツアーや大会主催者に流れ、
やがて賞金や契約料となって、あなたのもとに届くのです。

つまり、あなたが得る報酬とは、

ファンが動かしたお金が遠回りしてたどり着いたものにほかなりません。

では、プロゴルファーの収入源とは何でしょうか?

収入は大きく5つに分けられます。

まず一つ目は「試合収入」
これは、ツアーでの賞金、予選通過や順位によって得られる報酬などを指します。

二つ目は「契約収入」
クラブやウェア、ボールなどのメーカーとの契約による収入です。

三つ目は「出演収入」
テレビ番組やイベントラウンド、トークショーなど、あなたが登場することで得られる報酬です。

四つ目は「SNSや発信活動による収入」
YouTubeの運営、オンラインレッスン、ファンクラブやオンラインサロンの運営などがこれにあたります。

そして五つ目に、「レッスン収入」が加わる場合もあります。直接ゴルフを教えることで得る収入です。

今の時代、発信力や人間性も含めて、
多角的に価値を生み出すことが求められるのです。

では、そもそも「プロ」とは、単にゴルフが上手い人のことではありません。



プロフェッショナルとは、「見たい」「応援したい」「お金を払ってでも価値を感じる」――そんな存在であるべきです。勝つだけでなく、人として、選手として、魅力があることが、プロの条件です。

だからこそ、プロとしての行動基準は、
競技力にとどまらず、「人間力」「商品力」も重要です。


SNSやYouTubeで自分の価値を表現し、
試合後のコメントやメディア対応では誠実さと感謝を忘れず、
どんな状況でも他者への敬意を持つこと。

勝ったときも負けたときも、
真摯な態度があなたの信頼を築きます。

私は、プロゴルファーとは「個人事業主であり、芸術家であり、アスリートであり、ブランド」だと思っています。

あなたが提供する価値は、単なるプレーの結果だけでなく、
その人間性と発信のすべてに表れます。

プロゴルファーとは、ファンの期待に応え、企業の価値となり、
勝つ努力を続け、信頼される人間であり続ける生き方です。

しかし、この世界には一つ落とし穴があります。

それは、「注目される=偉い」「勝った=すべて正しい」といった錯覚です。

プロの世界では、結果を出した選手が一気に持ち上げられることがあります。

SNSのフォロワーが増えたり、メディアで取り上げられたりするだけで、
「すごい」「天才だ」と言われ、まるで未来が保証されたかのように扱われます。

でもそれは、時に“幻想的な価値”にすぎません。

また、技術の高さと人間性は別物です。

「勝っている=人格も素晴らしい」とは限らないし、
「スポンサーがついている=社会的に偉い」わけでもありません。

スポーツの世界は、「勝てば賞賛、負ければ批判」される厳しい環境です。

だからこそ、自分を見失わない強さが必要なのです。

もっとも注意しなければならないのが、
周囲の“勘違い”です。

選手本人だけでなく、親や関係者までもが、
「特別な存在」と思い込みやすい。

指導者含め、メディア、応援してくれている方々への、
敬意を失いう行動をとり続ければ、後に自分に特大ブーメランで
戻ってくることを理解しましょう。


栄えるものは、いつか必ず衰える――これは、どの世界でも変わらぬ真理です。


信頼関係が崩れ始めると、技術もメンタルも伸び悩み、
やがて成績が落ちていきます。

そして、それまで支えてくれていたスポンサーやファン、
仲間たちも、少しずつ離れていくようになります。

そのとき、初めて気づくのです。

「あのとき、調子に乗らなければよかった」 と。

プロ選手であるあなたには、「注目されているのではなく、選ばれている」という自覚が必要です。

親や周囲の方々には、「子どもの才能は親の所有物ではない」と知っていただきたい。

「勝たせること」も大事ですが、「人として成熟させること」
「自主性」を伸ばすことに注力していただきたい。


最後にもう一度、

「勝ったときこそ謙虚でいられるか」――その姿勢こそが、あなたの未来を決めるのです。


勝利の瞬間だけでなく、そこに至るまでに支えてくれた、
多くの「見えない力」に気づける人であってください。


人は一人で立っているように見えて、
実は無数の「お陰様」によって立たされています。

ファン、家族、仲間、環境、そして見えないところであなたの成功を願った人たち――
その存在に「感謝」し、「心を向けられる人」は、決して傲らず、強さを失いません。


皆に応援してもらえる選手になってください。

期待しています。

プロフィール画像
この記事を書いた人:KENTARO ISHIHARA
15年間シンガポールを拠点にプロツアー参戦と指導経験を積み、現在は日本でプロコーチとして活動中。25年以上のプロゴルファー歴と世界中で学んだ理論をもとに、独自の「KIGOLF理論」を構築。クラブチャンピオンからプロ志望者、現役プロまでが信頼を寄せる本格的なレッスンを展開している。

・AimpointインストラクターLV2・Dr Kwon's BiomechanicsインストラクターLV1・Bio Swing DynamicsインストラクターLV2・Singapore PGA・Edel公認フィッター 詳しいプロフィールはこちら>>>

نموذج الاتصال